就業規則

就業規則に潜むリスク

【リスク1】採用時の書類を管理していない

会社と社員の間でトラブルが発生する可能性が一番高いのが、採用・退職時です。そうしたトラブルを回避するために有効な手段となるのが、正確な雇用契約書です。口頭ではなく、書面で残すことが大切です。
また、履歴書の内容を鵜呑みにせずに採用時の提出書類で確認をとるだけでも、リスクは格段に低くなります。

(採用決定時の提出書類)
第○○条
採用内定者が社員として採用されたときは、会社の指定した日までに次の書類を提出しなければならない。ただし、会社が認めた場合は、提出期限を延長し、又は提出書類の一部を省略することがある。
1.誓約書
2.身元保証書
3.住民票記載事項の証明書
4.通勤届兼車輌通勤許可申請書(添付書類として運転免許証、車検証、自賠責保険証、一定基準以上の任意保険証の各写し)
2
前項の提出書類の記載事項に変更が生じたときは、速やかに書面で会社にこれを届け出なければならない。

【リスク2】解雇と退職の違いがわからない

会社から一方的に契約を解消することが解雇で、就業規則に定められている一定の条件に合致することで当然に契約が解消になるのが退職です。解雇と退職の法的な意味や扱いは全く異なりますので、安易に解雇とすることはとても危険なことです。リスクが低く、その後のトラブルにも発展しづらいのは退職と言えます。

解雇は法的に、30日前に解雇予告をするか解雇予告手当(平均賃金の30日分)の支払いが必要となります。また、助成金を受給する際、過去の一定期間に一定割合の解雇者を出していないことや、その助成金の対象となる労働者を解雇していないことが要件とされます。
当事者にとっては、ハローワークで基本手当(失業保険の給付)を受給する際、自己都合退職とは異なり、支給制限(給付を受けるまでの3ヶ月の待機期間)がなかったり、基本手当も年齢や勤続年数によっては自己都合退職より手厚く支給されます。そのため、離職票の退職理由が解雇か自己都合退職かでトラブルとなることもありますので、退職届を書面で提出させることが重要です。
一度、会社の意に反して解雇を認めてしまうと、社員側に主導権を握られてしまい、トラブル処理に時間がかかり、社員の間にも不公平感が生まれ、社員のモチベーションを下げてしまうリスクもあります。

もし解雇規定が「その他やむを得ぬ理由から解雇の必要性が生じたとき」となっている場合、解雇の必要とはどのようなときか判断できず、解雇基準としては極めて曖昧です。あらかじめ退職と解雇の基準を規定することで、退社に伴う不毛なトラブルを回避することができます。

(退職)
第○○条
社員が、次の各号のいずれかに該当するに至ったときは退職とし、次の各号に定める事由に応じて、それぞれ定められた日を退職の日とする。
1
本人が死亡したとき…死亡した日
2
定年に達したとき…定年年齢に達した日
3
休職期間が満了しても休職事由が消滅しないとき…期間満了の日
4
本人の都合により退職を願い出て会社が承認したとき…発令により会社が指定した日
5
前号の承認がないとき…退職届を提出して14日を経過した時
6
役員に就任したとき…就任日の前日
7
従業員の行方が不明となり、1ヵ月以上連絡がとれないときで、解雇手続をとらない場合…1ヵ月を経過した日
8
その他、退職につき労使双方合意したとき…合意により決定した日
(解雇)
第○○条
社員が次の各号のいずれかに該当する場合は解雇とする。
1
精神又は身体に故障があるか、又は虚弱、傷病、その他の理由により業務に耐えられない、又は労務提供が不完全であると認められるとき
2
協調性がなく注意及び指導しても改善の見込みがないと認められるとき
3
職務の遂行に必要な能力を欠き、かつ、他の職務に転換させることができないとき
4
勤務意欲が低く、これに伴い、勤務成績、勤務態度その他の業務能率全般が不良で業務に適さないと認められるとき
5
正当な理由なき遅刻及び早退、並びに欠勤及び直前休暇要求が多く、労務提供が不完全であると認められるとき
6
特定の地位、職種又は一定の能力を条件として雇い入れられた者で、その能力及び適格性が欠けると認められるとき
7
事業の縮小その他会社のやむを得ない事由がある場合で、かつ、他の職務に転換させることもできないとき
8
重大な懲戒事由に該当するとき
9
前号に該当しない懲戒事由に該当する場合であっても、改悛の情が認められなかったり、繰り返したりして改善の見込みがないと認められるとき
10
非違行為が繰り返し行われたとき
11
会社の従業員としての適格性がないと判断されるとき
12
天災地変その他やむを得ない事由により、事業の継続が不可能となり、雇用を維持することができなくなったとき
13
その他前各号に準ずるやむを得ない事由があるとき

【リスク3】退職時の引継ぎにストレスを感じる

退職時は会社への忠誠心が薄れ、モチベーションも下がっているため、トラブルが起こりやすい時期と言えます。引継ぎもせず、有給休暇の消化に入ったり、後任者への連絡事項を怠たる場合もあります。対策として、引継ぎが義務であることを就業規則に明示することができます。

(自己都合による退職手続)
第○○条
社員が自己の都合により退職しようとするときは、退職したい旨を記載した書面(以下「退職届」という。)により申し出なければならない。
2
退職届を提出した者は、退職日まで従来どおり業務に従事しなければならない。
3
退職届を提出した者は、退職日までの間に必要な事務の引継ぎを完了しなければならず、退職日からさかのぼる2週間は現実に就労しなければならない。これに反して引継ぎ完了せず、業務に支障をきたした場合、懲戒処分を行うことがある。
(業務引継ぎ)
第○○条
退職する者及び解雇された者は、速やかに、かつ、確実に業務の引継ぎを完了しなければならない。
2
前項に違反し、引継ぎを怠った場合、不完全な引継ぎを行った場合、その他業務に支障をきたした場合には、懲戒処分を科すことがある。

【リスク4】残業時間の解釈がバラバラである

法定上の原則の時間外基準は「実労働時間が1週40時間を超えた場合、もしくは1日8時間を超えた場合」です。時間外の考え方は社員によって違っている可能性があります。例えば所定労働時間8時間の会社で、始業時間に1時間遅刻し、終業時間後に1時間就労した社員がいたとします。実労働時間は8時間ですので、法定上の残業代は発生しません。しかし、本人にしてみれば定時を超え残業したのだから、当然1時間の残業代が発生している、と考えているかもしれません。
会社として、残業代は所定労働時間の8時間を超えてから発生するのか、終業時間を超えて労働したら発生するのか、明確な基準を示す必要があります。

対策として、所定労働時間は指揮命令に基づく実作業の開始及び終了までを労働時間として把握する「実労働時間主義」を採用すれば、必ずしも「終業時刻を超えて仕事をしたら残業」ということにはなりません。また、自主的な早出や延長は、基本的にはここでいう労働時間には含まれません。

(労働時間)
第○○条
所定労働時間は、1週間については40時間、1日については8時間とする。
2
始業時刻(会社の指揮命令に基づく実作業の開始時刻をいう。)、終業時刻(会社の指揮命令に基づく実作業の終了時刻をいう。)及び休憩時間は次のとおりとする。
始業・終業時間 休憩時間
始業   8時00分
終業  17時00分
12時00分から13時00分まで

【リスク5】休職制度を把握していない

近年はメンタルヘルス問題により休職制度が注目されています。休職制度は法定外の福利措置のため会社の任意で定めることができます。
従来の私傷病を想定した休職制度では精神疾患への対応が不十分だったり、中小企業が大企業並みの長期休職期間を規定している場合も見受けられます。結果、休職制度を悪用されることもあり、そのような悪用する社員がいる職場では、他の社員へのしわ寄せが起こり、不満が噴出してモチベーションを下げてしまいます。
メンタルヘルス問題を抱える労働者の数が今後も増え続けることは確実です。その際、休職制度の適用ルールが不明確であることに起因するトラブルが起きないよう、明確かつ適切な規定の整備が必要です。

(休職)
第○○条
社員が、次の各号のいずれかに該当したときは、休職とする。ただし、試用期間中の者、パートタイマー等に関しては適用しない。
1.業務外の傷病により欠勤が、継続、断続を問わず日常業務に支障をきたす程度(おおむね1ヵ月程度以上とする。)に続くと認められるとき
2.精神又は身体上の疾患により労務提供が不完全なとき
3. その他業務上の必要性又は特別の事情があって休職させることを適当と認めたとき
(休職期間)
第○○条
前条の休職期間(第1号にあっては、発令により会社が指定した日を起算日とする。)は次のとおりとする。ただし、この休職は法定外の福利措置であるため、復職の可能性が少ないものと会社が判断した場合は、裁量により、その休職を認めず、又はその期間を短縮することがある。
勤続1年未満の者     3カ月
勤続1年以上5年未満の者 1年
勤続5年以上の者     1年6カ月
2
同一事由による休職の中断期間が3ヵ月未満の場合は前後の休職期間を通算し、連続しているものとみなす。また、前条第1号及び第2号の休職にあっては症状再発の場合は、再発後の期間を休職期間に通算する。
3
休職期間は、原則として、勤続年数に通算しない。ただし、会社の業務の都合による場合及び会社が特別な事情を認めた場合はこの限りでない。
4
休職期間中は、無給とする
5
休職期間中の社会保険料は、当月末日までに社員が会社の指定する口座にその全額を振り込まなければならない。
(復職)
第○○条
社員の休職事由が消滅したと会社が認めた場合、又は休職期間が満了した場合は、原則として、休職前の職務に復帰させる。ただし、旧職務への復帰が困難な場合又は不適当と会社が認める場合には、旧職務とは異なる職務に配置することがある。
2
休職中の社員が復職を希望する場合には、所定の手続により会社に申し出なければならない。
3
休職事由が傷病等による場合は、休職期間満了時までに治ゆ(休職前に行っていた通常の業務を遂行できる程度に回復することをいう。以下同じ。)、又は復職後ほどなく治ゆすることが見込まれると会社が認めた場合に復職させることとする。また、この場合にあっては、必要に応じて会社が指定する医師の診断及び診断書の提出を命じる場合がある。
4
休職期間が満了しても復職できないときは、原則として、休職満了の日をもって退職とする。
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