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いま、企業を取り巻く人事・労務環境は大きな転換期を迎えています。「人手不足」「最低賃金の急上昇」「雇用形態の多様化」「デジタル化」「人的資本経営の開示」など、企業を支える人事制度は、従来のやり方では現代の人事課題に十分に対応できない時代となりました。
これからの時代、人事制度は単に給与や等級を決める仕組みではなく、人材の成長と企業の生産性を両立させる経営基盤として再構築する必要があります。
働き方改革関連法と均等・均衡待遇の時代
2018年に公布された「働き方改革関連法」により、企業には「同一労働同一賃金」の原則が課されました。正社員と非正規社員(有期・パート・派遣)の間で、不合理な待遇差を設けることが禁止され、企業には説明責任が求められています。この考え方は、単に賃金差を是正するものではなく、仕事の内容や責任に応じて公正な処遇を行うことを目的としています。
さらに、これに先立つ政府の「働き方改革実行計画」では、労働時間是正や多様な働き方推進とともに、「人材を資本として活かす」視点が強調されました。つまり、いま企業が取り組むべきは、制度改定そのものではなく、人を軸とした経営構造への転換です。
制度改革を迫る社会構造の変化
企業の人事制度改革を促す要因はかつてないほど多岐にわたっています。
給与計算や勤怠データから、法令基準を超える時間外労働が見られる場合には、産業医や提携医師による面談を検討いただくよう提案しています。これにより、過重労働リスクの早期把握や健康被害の予防につながります。
ここ数年、最低賃金は過去にないペースで上昇を続けています。従来の賃金体系では逆転現象や不公平感が生じています。賃金表の再構築や評価連動の仕組み化が避けて通れなくなっています。
リモートワーク、時短勤務、副業・兼業、ジョブ型雇用など、働き方は多様化しました。同時に勤怠・給与・評価といった人事領域のDX化が進み、「制度とシステムが連動する」運用設計が求められています。
上場企業では人的資本の情報開示が義務化され、中小企業にも波及しています。企業は「人材の確保・育成・定着」「スキル」「エンゲージメント」「健康」「多様性」などを数値で示す必要があり、人事制度はその“根拠データ”を生み出す装置となります。
人事制度は時代とともに変遷を遂げています。人事制度は経営者の関心以上に、従業員にとっても日々の生活に多くの影響を与えることになります。運用が上手くいかないと、職場内の日々の人間関係や精神的ストレスに発展する悩ましい存在となり得ます。人事制度は、その成否によって、従業員のモラール(士気)ばかりか、企業業績まで左右しかねない企業共通の重大な経営課題であると考えています。
ところで、従業員のモラールを上げるための人事制度を策定改定するうえで、大切なポイントがあります。多くの方が、ご存知のハーズバーグの「動機付け衛生理論」とマズローの「欲求5段階説」です。
「動機付け衛生理論」では、動機付け要因で仕事の満足に関わるのは、「達成すること」「承認されること」「仕事そのもの」「責任」「昇進」などです。これらが満たされると満足感を覚えるが、欠けていても職務不満足を引き起こすわけではありません。衛生要因で仕事の不満足に関わるのは「会社の政策と管理方式」「監督」「給与」「作業条件」などです。これらが不足すると不満足を引き起こしますが、満たしたからといっても満足感につながるわけではありません。単に不満足を予防する意味しか持たないということです。つまり、人事制度を策定・改定する場合の大切な視点は、従業員の仕事に対する満足度を促進するツールであり、単に結果主義で、短期で目標を達成した人に給与をより多くフィードバックするような人事制度は制度として機能しなくなる可能性があります。また、給与に関しては、衛生要因であり給与を仮に上昇させるだけでは、最終的な満足には至らないということです。
「欲求5段階説」は、マズローのモチベーション理論で人間の欲求を5段階に分類し、重要性に従ってそれらが階層構造をなしているとしました。低次元の欲求が満たされれば、さらに高次元の欲求を満たすべく行動するという考えで、5段階の分類は以下の通りです。
動機付け要因は、マズローの欲求段階説でいうと「自己実現欲求」「自尊欲求」さらに「社会的欲求」の一部に該当する欲求を満たすものとなっています。衛生要因は、マズローの欲求段階説でいうと、「生理的欲求」「安全・安定欲求」と「社会的欲求」の一部の欲求を満たすものとなっています。
つまり、企業の業績を進展させ、企業を成長させる目的において、人事制度は、従業員の欲求と企業目的を高次元でバランスよく保つことであるといえます。
門倉事務所では、人事制度を経営の意思を「仕組み化」するツールと位置づけています。制度づくりのご相談を受ける際、お客様が抱える課題は共通しています。
人件費を適正にコントロールしたい
成果の上がる人に報い、そうでない人との差を明確にしたい
年齢や勤続ではなく役割・貢献で処遇したい
上司によって評価が変わる現状を是正したい
パート・契約社員を含めた公平な制度をつくりたい
社員が辞めない会社にしたい
社員の評価をどのようにしたらいいかわからない
社員の定着のために、社員の人事制度を導入したい
退職金制度をつくりたい
退職事由によって、退職金の額を調整したい
これらの課題を解決するためには、「公平・透明・納得」の3原則を軸とし、社員のモチベーションを引き出し、生産性を高める制度に転換する必要があります。
社員を「職務」「能力」「役割」の観点から格付けし、昇格基準を明確にする仕組みです。かつて多くの企業が採用していた「職能資格制度」は、勤続や経験など属人的な要素に依存し、年功序列の温床にもなっていました。一方、近年注目されているのが「役割等級制度」です。
役割等級制度では、「会社から期待される役割(ミッション)」の大きさを基準に格付けします。同じ課長であっても、担当する組織規模・責任範囲・意思決定レベルが異なれば、処遇も異なります。これにより、若手の抜擢やシニア人材の再活用など、柔軟で戦略的な人材配置が可能になります。
評価制度は、社員の成果・行動・能力を測定するものです。しかし、本来の目的は“査定”ではなく“育成”にあります。
評価を通じて上司と部下が面談し、成果や課題を共有し、次の成長につなげる。このプロセスが制度の生命線です。多くの企業では、半年ごとに評価を行い、賞与や昇給に反映させていますが、同時に「成長支援面談」としての機能を重視することが求められます。
また、評価者教育の実施も欠かせません。評価の公平性を担保することが、制度の信頼性を支えます。
賃金制度 ― 努力が報われる報酬体系
賃金制度は、等級と評価に基づき報酬を決定する仕組みです。基本給・職務給・役職手当・賞与などを体系的に整理し、成果と処遇の関係を明確化します。成果主義に偏りすぎると短期志向に陥るため、企業理念・チーム貢献・スキル成長といった「長期的価値」も評価に組み込みます。
また、最低賃金上昇に対応するため、職務給的要素を導入し、「支払いの根拠が説明できる給与表」を整備することが重要です。賃金制度は「コスト」ではなく、「人材投資の設計図」です。
「同一労働同一賃金」とダイバーシティの融合
同一労働同一賃金は、単なる賃金調整ではありません。それは「多様な人材が対等に能力を発揮できる仕組み」への転換です。企業がこの原則に真剣に向き合うことは、結果としてダイバーシティ経営を推進することにほかなりません。
経営者に求められるのは、「限られた人件費をどう公平に分けるか」ではなく、「どうすれば社員が最大のパフォーマンスを発揮できるか」という視点です。パート・契約社員・シニア・外国人など多様な人材の強みを生かすことが、企業の競争力を高めます。
時代に適合した人事制度とは、「違いをなくす制度」ではなく、「違いを活かす制度」です。
人的資本経営と人事制度の関係
近年、企業価値の源泉は「財務資本」から「人的資本」へと移っています。人的資本経営とは、社員をコストではなく投資対象として捉え、人材の質と成長が企業価値を左右するという考え方です。人事制度は、その人的資本を可視化する仕組みです。評価や昇格のデータは、「どんな人材が育ち、どんなスキルを持ち、どのように定着しているか」を示す経営指標となります。したがって、人事制度の整備は、人的資本経営を実践するための第一歩といえます。
制度運用とDX(デジタルトランスフォーメーション)
どれほど優れた制度を作っても、運用が煩雑では定着しません。労務管理ソフトを活用してデータに基づく労務管理DXを実現します。評価結果と賃金改定を自動連携する仕組みを整えることで、透明性と効率性が飛躍的に高まります。門倉事務所では、制度設計とDX化をセットで支援し、制度を「動かす仕組み」まで伴走しています。
新しい時代の人事制度に求められる要素
これからの人事制度に必要なのは、次の5つの視点です。
評価基準と処遇を明確化し、説明責任を果たす。
リスキリング・キャリア形成を人事評価に反映する。
意見を言える風土を制度で支える。
データ管理と制度運用を統合する。
人材データを経営戦略の根拠として活用する。
制度を変えることは、文化を変えること
人事制度は、企業文化そのものを映す鏡です。給与や等級の枠組みを整えることはゴールではなく、「社員が働きがいを感じ、企業が成長するための土台を築くこと」が目的です。
制度は形ではなく「運用」であり、運用は仕組みではなく「人」で決まります。
門倉事務所では、人事制度・退職金制度の設計から運用・定着までを一貫して支援し、経営者の想いを制度という形に変え、「人を守る」から「人を動かす」へ──企業の未来をともに創るパートナーとして、持続的な成長を支えてまいります。
人事制度は導入すれば自動的に機能するのですか?
いいえ。制度は「設計する」だけでは十分に機能しません。評価の実施、結果の反映、従業員へのフィードバックなど、日常的な運用を通じて定着していきます。門倉事務所では、この「定着」と「運用」を支えるサポートを行っています。
評価制度の運用を具体的にどのように支援してもらえますか?
評価シートの配布・回収、評価結果の集計代行、部門ごとの傾向分析までお任せいただけます。さらに評価結果をもとに昇給シミュレーションや昇給案の提示も可能です。人事担当者の負担を大幅に軽減し、公平性・透明性の高い運用を実現します。
管理職が評価のフィードバックを苦手としています。対応できますか?
可能です。門倉事務所では、評価面談用のコメント例や手順書を提供し、管理職が従業員にわかりやすくフィードバックできるよう支援します。制度の「形骸化」を防ぎ、実際に現場で活用される体制づくりをお手伝いします。
退職金制度と企業型確定拠出年金(DC)は何が違うのですか?
退職金制度は会社が独自に設ける仕組みで、支給方法や計算基準は企業ごとに異なります。一方、DCは会社が掛金を拠出し、従業員自身が運用して将来の年金を形成する制度です。税制上の優遇もあり、近年は「従来型退職金制度からDCへの移行・併用」を検討する企業が増えています。
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