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2025年問題から2040年問題

 約800万人の団塊の世代が75歳となる2025年は、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という「超・超高齢社会」になり、
医療や介護の需要は今よりさらに高まり、社会保障費の急増が予想されています。これがいわゆる2025年問題です。
 
 国は、中学校の行政エリアを基軸にした「地域包括ケアシステム」という仕組みを構築し様々な法整備や改革を推し進めてきました。
地域包括システムの概念は、平成28(2016)年7月に厚労省の「我が事・丸ごと地域共生社会実現本部」において、社会保障政策の枠を
超えた生活保障政策の全体的な再構築を図るため、すべての世代・すべての生活課題を対象とし、多様な社会福祉施策を一体化した統合
的な地域ケアを構築する政策として「地域共生社会」の実現という方針によります。
 
 端的に言うならば、「医療や介護が必要な状態になっても、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した生活を続け
ることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される」という考え方です。
 
 これまで、病気や介護などの問題は、国全体で支えるという考え方のもと、国民が何らかの公的医療保険に加入し、お互いの医療費を
支え合う「国民皆保険制度」(1961年)が整備されてきました。制度の確立からすでに50年以上も経過し、今では国民誰もが、
保険証1枚で、どの医療機関にもかかれるのは当然のことだと思われています。しかし、海外に目を向けると、必ずしもそうではありま
せん。先進国の中でも民間保険中心の制度もありますし、無保険の国民を多く抱える国も存在します。日本の医療保険制度に対する評価
は高く、世界トップクラスの長寿国に押し上げた主要因でもあります。
 しかし、この制度が作られたときには、これほどにまで少子・高齢化の進展や病気や介護の中身が多様化していくことが、あまり想定
されていませんでした。今や日本は、社会保険制度ができた当時の社会構造とはまったく違う状況になっています。当然、当時の社会保障
の仕組みがそのまま通用するはずがなく、社会保障費が不足するという状況になっているのです。
2019年の消費税の増税で何とか2025年問題を乗り越える目処をつけたのも束の間、ようやく見えた峠の先に、新たに大きな壁に立ち向か
うことになります。それが2040年問題です。
 
 2040年には、人口動態の予測によれば、我が国の人口が約1億1000万人となり、高齢者数がピークを迎えると推計されています。
こうした人口構成の変化による様々な影響が懸念され、社会保障の持続可能性が大きな課題となると国は認識しています。
国は、生産性の向上や働き方改革なども含めて、2040年を見据えた少子高齢化と同時にライフスタイルが多様となる中で、誰もが安心で
きる社会保障制度に関わる検討を行うため、「全世代型社会保障検討会議」や「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」など新た
な様々な改革が動き出しています。
 
 「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」では、現役世代(担い手)の減少が最大の課題。一方、高齢者の「若返り」が見られ、
就業率も上昇。今後、国民誰もが、より長く、元気に活躍できるよう、以下の取組を進めるとしています。
⓵ 多様な就労・社会参加の環境整備
⓶ 健康寿命の延伸
⓷ 医療・福祉サービスの改革による生産性の向上
⓸ 給付と負担の見直し等による社会保障の持続可能性の確保
 
そして、民間の計画で言うところの中期経営計画的な介護事業計画において、基本指針の素案を提示しました。
基本指針は、市町村や都道府県が「介護保険事業(支援)計画」を策定する際のガイドライン的役割を果たすもの。栃木県でも遅くても
来年3月までには第8期介護保険事業計画が公表されるでしょう。
第8期介護保険事業計画では、(2021~2023)年度の3年計画として、第7期計画での目標や具体的な施策を踏まえ、2025年を目指した
地域包括ケアシステムの整備、更に現役世代が急減する2040年の双方を念頭に、高齢者人口や介護サービスのニーズを中長期的に見据え
ることについて計画に位置付けています。

そして、計画の柱として次の6つが検討されています。
⓵ 2025・2040年を見据えたサービス基盤、人的基盤の整備
⓶ 地域共生社会の実現
⓷ 介護予防・健康づくり施策の充実・推進(地域支援事業等の効果的な実施)
⓸ 有料老人ホームとサービス付き高齢者住宅に係る都道府県・市町村間の情報連携の強化
⓹ 認知症施策推進大綱等を踏まえた認知症施策の推進
⓺ 地域包括ケアシステムを支える介護人材確保及び業務効率化の取組の強化

 このように概観すると、国の目指すべき方向性や施策の先読みもできると感じます。
70歳までの働くことができる社会基盤の整備も2040年問題をクリアする施策であることも容易に理解できます。