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女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律の解説

Ⅰ 法改正のポイント
「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」(令和元年法律第24号。以下「改正法」という。)は、第198回国会において、令和元年5月29日に可決・成立し、同年6月5日に公布された。
 改正法は、女性をはじめとする多様な労働者が活躍できる就業環境を整備するため、女性の職業生活における活躍の推進に関する一般事業主行動計画の策定業務の対象拡大、情報公表の強化、パワーハラスメント防止のための事業主の雇用管理上の措置義務等の新設、セクシュアルハラスメント等の防止対策の強化等の措置を講ずることとしている。
 本稿においては、改正法の背景・経緯及び改正内容について紹介する。

Ⅱ 改正法の背景・経緯
●女性活躍の現状
 近年の女性の就業の状況については、女性の就業者数の増加子育て世代の女性の就業率が上昇し、女性の年齢階級別の労働力率における、いわゆる「M字カーブ」が以前に比べて緩やかになってきている。しかしながら、年齢階級別に女性の就業形態を見ると、正規雇用の就業率は第1子世代の平均年齢より手前の「25~29歳」層でピークを迎え、その後は年齢とともに減少している。また、管理的職業従業者に占める女性割合は13.2%と諸外国に比べて低い水準である。こうしたことから、女性活躍を更に推進していくことが必要である。



 女性活躍推進法は、職業生活における女性の活躍を迅速かつ重点的に推進するための時限立法(10年間)として平成27年9月に施工され、平成28年4月には民間事業主に対する一般事業主行動計画の策定の義務付け等が施工され、全面的に施工された。その主な内容は、以下のとおりである。

① 常時雇用する労働者が300人を超える一般事業主(民間事業主)及び特定事業主(国・地方公共団体)は、職場の女性活躍に関する状況の把握、課題の分析を行い、それらを踏まえて一般事業主行動計画又は特定事業主行動計画を策定しなければならない。

② 常時雇用する労働者が300人を超える一般事業主(民間事業主)及び特定事業主(国・地方公共団体)は、女性の職業選択に資するよう、女性の活躍に関する情報を公表しなければならない(省令で定める項目から1つ以上)。

③一般事業主へのインセンティブを付与するため、国は、優良な一般事業主に対する認定(えるぼし認定。満たす基準の数により3段階に分かれている。)することができる。

 女性活躍推進法が施工されて以降、民間企業における同法に基づく女性活躍の取組は着実に進展し、行動計画の策定・届出が義務付けられている301人以上の企業を中心に届出数は2万社を超え、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」では、約1万3千社が行動計画を掲載、約1万社が同法に基づく情報を公表している。また、800を超える一般事業主がえるぼし認定を取得している(令和元年6月末時点)。

●ハラスメントの現状
 嫌がらせ、いじめ又は暴行を受けたことによる精神障害の労災認定件数は増加傾向にあり(平成29年度は88件)、都道府県労働局における職場の「いじめ・嫌がらせ」の相談件数も増加傾向(平成29年度は72,067件)となっており、職場のパワーハラスメント防止は喫緊の課題となっている。セクシュアルハラスメント、妊娠・出産等に関するハラスメントについても、都道府県労働局に対する相談件数は高止まりとなっており(平成29年度6,808件)、防止対策の実効性の向上が必要となっている。
 セクシュアルハラスメントについては、男女雇用機会均等法により、事業主に対し、相談体制の整備等の雇用管理上の措置義務を課している。措置の具体的な内容については、同法に基づく指針(事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針)で定めている。具体的には、事業主の方針の明確化及びその周知・啓発や、相談(苦情を含む)に応じ適切に対応するために必要な体制の整備等の措置を講ずることとしている。
 また、男女雇用機会均等法においては、セクシュアルハラスメントに関する労使紛争について、都道府県労働局長による紛争解決援助や紛争調整委員会による調停(行政ADR)の対象とするとともに、事業主による雇用管理上の措置義務の履行を確保するため、都道府県労働局長による報告徴収、助言、指導、勧告、勧告に従わない場合の企業名公表について規定されている。
 妊娠・出産に関するハラスメントについては、男女雇用機会均等法において、育児休業等に関するハラスメントについては、育児・介護休業法において、上記のセクシュアルハラスメントと同様の規定が設けられている。

●労働政策審議会における議論等
 女性活躍推進法については、附則に基づき、施工後3年後の見直しを行うこととされている。また、パワーハラスメントについては、平成30年3月の「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会 報告書」において「労働政策審議会において、本検討会で議論された対応案や、現場で労使が対応すべき職場のパワーハラスメントの内容や取り組む事項を明確化するためのものの具体的内容について、議論、検討が進められ、厚生労働省において所要の措置が講じられることが適当」とされた。
 これらを受け、平成30年8月より、労働政策審議会雇用環境・均等分科会において、合計10回にわたり議論・検討が行われ、平成30年12月14日に「女性の職業における活躍の推進及び職場のハラスメント防止対策等の在り方について(建議)」(以下、単に「建議」という。)がとりまとめられた。

Ⅲ 改正法の概要
 建議の内容を踏まえ、改正法には以下の内容が盛り込まれている。

●女性活躍の推進
1 一般事業主行動計画の策定義務の対象事業主の拡大
 事業主における女性活躍に関する計画的なPDCAサイクルを広く促すため、一般事業主行動計画の策定義務の対象事業主について、現行の常時雇用する労働者が300人を超える一般事業主から、常時雇用する労働者が100人を超える一般事業主へ拡大することとした。

2 女性の職業生活における活躍に関する情報公表の強化
(1)情報公表義務の対象事業主の拡大
 各事業主の女性活躍の取組を促すとともに、求職者の職業選択に資するため、より多くの事業主で情報公表が進むよう、情報公表の対象事業主について、現行の常時雇用する労働者が300人を超える一般事業主から、常時雇用する労働者が100人を超える一般事業主へ拡大することとした。

(2)情報公表項目の見直し
 情報公表項目について、女性活躍推進法の基本原則を踏まえ、情報公表項目を「①職業生活に関する機会の提供に関する実績」及び「②職業生活と家庭生活の両立に資する雇用環境の整備に関する実績」に区分し、当該区分毎に、1項目以上公表することを義務付けることとした。

(3)履行確保の強化
 求職者の職業選択に影響を与える情報公表義務違反や虚偽の情報公表に関して勧告に従わない企業については、企業名を公表できることとした。

3 女性活躍に関する取組が特に優良な事業主に対する特例認定制度(プラチナえるぼし(仮称))の創設
 事業主に対するインセンティブを強化し、更なる女性活躍の取組を推進するため、現行の「えるぼし認定」よりもさらに基準の高い認定制度として、「プラチナえるぼし(仮称)」制度を創設することとした。また、認定を取得した事業主については、行動計画の策定義務を免除することとした。

4 中小企業に対する配慮
 2の情報公表の強化のうち、(2)については、常時雇用する労働者が300人を超える一般事業主に限ることとした。
 また、改正法の施行日については、原則として公布の日から1年以内の政令で定める日とするが、常時雇用する労働者が100人を超え300人以下である一般事業主に対する一般事業主行動計画の策定や情報公表の義務付けについては、公布の日から3年以内の政令で定める日とした。

●ハラスメント対策
1 国の施策としてハラスメント対策を法律に明記
 国は、就業環境を害するような職場におけるハラスメント全般について、総合的に取組を進めることが必要であり、その趣旨を労働施策総合推進法において明確化することとした。

2 パワーハラスメント防止対策の法制化
(1)パワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置(労働施策総合推進法)
 職場のパワーハラスメントを防止するため、事業主に対して、その雇用する労働者の相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備する等、当該労働者が自社の労働者等からパワーハラスメントを受けることを防止するための雇用管理上の措置を講じることを法律で義務付けることとした。
 パワーハラスメントについては、職場において行われる「①優越的な関係を背景とした言動であって」、「②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより」、「③労働者の就業環境を害すること」であることを雇用管理上の措置義務に関する規定の中で明記している。
 職場のパワーハラスメントの定義の考え方や事業主が講ずべき措置の具体的内容等を示す指針を今後策定する。

(2)職場のパワーハラスメントに関する紛争解決、履行確保(労働施策総合推進法)
 職場のパワーハラスメントに関する労使紛争の解決について、都道府県労働局長による紛争解決援助、紛争調整委員会による調停(行政ADR)の対象とする。また、事業主の措置義務の履行確保のため、都道府県労働局長による報告の請求、助言、指導、勧告、勧告に従わない場合の厚生労働大臣による企業名公表の対象とする。

3 セクシュアルハラスメント等の防止対策の強化
(1)セクシュアルハラスメント等に関する国、事業主及び労働者の責務の明確化(男女雇用機会均等法、労働施策総合推進法、育児・介護休業法)
 セクシュアルハラスメントは行ってはならないこと等に対する関心と理解を深めることや、他の労働者に対する言動に注意を払うこと等を関係者の責務として明記する。なお、パワーハラスメントやマタニティハラスメントについても、同様の責務に関する規定を設ける((2)及び(4)も同様)。

(2)事業主に相談等をした労働者に対する不利益取り扱いの禁止(男女雇用機会均等法、労働施策総合推進法、育児・介護休業法)
 労働者が相談等を行うことに躊躇することがないよう、労働者がセクシュアルハラスメント等に関して事業主に相談したこと等を理由とした不利益取扱いを禁止する。

(3)自社の労働者等が他社の労働者にセクシュアルハラスメントを行った場合の協力対応(男女雇用機会均等法)
 事業主に対し、他社から雇用管理上の措置の実施(事実確認等)に関して必要な協力を求められた場合に、これに応じる努力義務を設ける。
 あわせて、自社の労働者が他社の労働者等からセクシュアルハラスメントを受けた場合も、相談に応じる等の措置義務の対象となることを指針で明確化する。

(4)調停の出頭・意見聴取の対象者の拡大(男女雇用機会均等法、労働施策総合推進法、育児・介護休業法)
 セクシュアルハラスメント等の調停制度について、紛争調整委員会が必要を認めた場合には、関係当事者の同意の有無に関わらず、職場の同僚等も参考人として出頭の求めや意見聴取が行えるよう、対象者を拡大する。

4 中小企業に対する配慮
 改正法の施行日については、原則として公布の日から1年以内の政令で定める日とするが、常時雇用する労働者が100人を超え300人以下である一般事業主に対するパワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置の義務付けについては、公布の日から3年以内の政令で定める日までは努力義務とする。

Ⅳ おわりに
 改正法の施行に向けて、今後、付帯決議の内容等を踏まえて、労働政策審議会において省令や指針等の内容について議論が行われることとなる。
 改正法の円滑な施行に向け、労働政策審議会での議論を踏まえ、省令・指針等の整備や、改正内容の周知徹底、中小企業等への支援などを実施していくことにより、誰もが自らの個性と能力を十分発揮し、安心して働ける職場づくりを推進していきたい。



引用:
 厚生労働省 雇用環境・均等局 雇用機会均等課
 「月刊社労士」9月号